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自治体の広域連携がもたらす 地域課題の解決、 未来技術の社会実装
東三河ドローン・リバー構想推進協議会
隣接する自治体間の官民で協議会を結成し、ドローンやエアモビリティといった新しい産業の集積や災害対応について事業推進を行う。国内では類を見ない形で進む取組について、東三河ドローン・リバー構想推進協議会事務局の豊川市企画部企画政策課 岩本氏と、災害対応研究会を担当する豊川市企画部防災対策課 鈴木氏に話を伺った。
【地域概要・協議会】
地域の産業振興策として2市合同の協議会が発足
― 東三河ドローン・リバー構想推進協議会の概要を教えてください。
岩本 豊川市、新城市に加え、近隣企業や団体などで結成されており、ドローンやエアモビリティをはじめとする未来技術を実装するためのフィールド構築、新産業に向けた新しいモデルの構築などを狙いとしています。実証実験及び実装に向けての環境整備やイベント、シンポジウム開催、企業支援などを行っていこうと令和2年8月に設立しました。
自動車産業を核とする産業が盛んな地域特性もあり、ものづくり系の企業を中心に官民51 団体が協議会に加わっています(2021 年12 月時点)。
オブザーバーとして、内閣官房ドローン室、国交省、経産省、農水省、防衛省、加えてJAXA、愛知県に参画していただいています。
― 基礎自治体の取組に県も参画しているというのは珍しいのでは。
岩本 全国的にも希少な事例かなと感じています。通常は基礎自治体だけの取組に特化しますが、愛知県は先行してドローンに関する協議会を作っていたので、そこと連携して県と市で共催事業を組むことも可能となっていますし、こちらからは情報発信や市町村連携などで事例の蓄積、ニーズ集約及び提供を行い、県は開発費の支援等、相互の役割分担を行いながら地域課題解決を推進していきたいです。
― 設立の経緯及び、豊川市・新城市が連携自治体となった背景は。
岩本 豊川市、新城市は、一級河川豊川を有して地域が同じ圏域として成り立っている場所であることに加え、従来から2市のまちづくり団体が合同で例会を行うなど、相互に関わりがあるといった背景を持っていました。加えて、ドローンの産業的な成長の可能性に着目した各まちづくり団体からの要請で、民間主導による新たな産業振興策として取組を着手しました。
鈴木 地域課題としては、将来の人口減、国際空港・高速道路からのアクセス不利、地域経済衰退の可能性、南海トラフ地震をはじめ大規模災害の可能性があります。それらの解決に向けて組織体制を構築し、豊川市、新城市を流れる豊川と支流上空でドローンを使った物資輸送に関する【物流】、農林業での物資輸送や獣害被害把握、測量や工事現場の安全確保やインフラ点検等の省力化に関する【作業省力化】、防災対策に関する【災害対応】という3つの軸を設け、それぞれの研究会を設立してパートごとに具体的取組を推進していきます。
【協議会の成果】
自治体、民間企業、団体が共通のビジョンを持って推進
―これまでの活動実績は。
岩本 行政・企業・団体が参画するプラットフォームとして同じ方向を目指していくため、2020 年度には東三河ドローン・リバー構想を5年間の重点施策としてまとめています。活動を推進するために両市で地方創生に関する包括連携協定や市有財産無償貸借契約を締結したり、国補助金の採択を得たりするなど、取組が活発化しています。
鈴木 ドローンの実証実験に関しては、令和2年・3年度で【物流】が5回、【作業省力化】7回、【災害対応】5回、延べ58 事業者が関わっています。例えば、地元の民間事業者が撮影した映像を災害対策本部に送るところまで実現している状態で、現状は試行段階。さらなるシステムの構築を行っていきたいと考えています。
岩本 地域における継続的な取組のためには人材育成も欠かせません。教育でいうと地元のまちづくり団体が教育委員会にドローンの機体やプログラミング教材の寄贈等を行い、小学校でのプログラミング教育の授業が始まっており、ドローンに触れ、興味を持っていただく機運の醸成につながっています。また、地元の企業がドローン事業に参入したり、ドローン事業部新設等を行ったりといった動きが見られていますし、積極的に実証実験等のオペレーションを担う事例も見られ、これこそが地域における新産業構築とその利活用となる取組の最たるものだと感じています。
―次年度以降、注力していく部分は。
岩本 【物流】に関しては、河川ルートを長くしてドローンポートのさらなる開発と自律飛行の仕組みと合わせることを考えていきます。ここは地元企業や大学などによって開発が進展しており、元々ものづくり企業や人材が充実していたというところからスタートした当協議会の取組の本丸に
なるため、ドローン周辺製品の技術開発を精力的に進めていきたいですね。その意味でも、【物流】のパートは重点施策になります。
【作業省力化】については、現在会員企業さんがダムの点検実証を手掛けているので、外壁の点検ロボットがコンクリート壁に直接打音することが可能です。ドローンで空から俯瞰的に見る技術と、打音してその躯体を見るロボットと併用の技術の確立ができないかなと考えており、新しい技術モデルを作ってそれを地域に広げていく可能性を見い出しています。
鈴木 【災害対応】のパートが、自治体としては一番大きいところです。災害が起こった時に迅速に対応できる仕組みを作り上げることに主眼をおいており、その仕組みを作って本市同様に南海トラフ地震が想定される他の地域の自治体の方との意見交換などをすることで、より実用性の高い災害対応のシステムが構築できるのではないかと考えています。
― 災害対応に関してはどのような体制を構築されていますか。
鈴木 豊川市でいうと、平成29 年に市職員で構成する「防災ドローン航空隊」を結成しました。多様な部署の職員で構成されており、隊員数は77 名。これは全国のドローン隊でも屈指の隊員数だと自負しています。
また、豊川市防災センターを中心に、航空隊や消防だけでなく関係団体や民間企業からも、映像を収集・集約し、その映像を災害現場で活動する部隊、例えば自衛隊、消防、ライフラインに関わる企業等々、実働する方々へもリアルタイムの映像を展開していくことができるようにと考えています。
「防災ドローン航空隊」は当然有事だけではなく平時も数多く活用しており、平成29 年6月~令和3年11 月で229 件の活用事例があります。
【協議会の利点とアドバイス】
各自治体の資源・ノウハウの共有、災害を含めた官民連携
― 広域連携(協議会)の利点と、課題がある場合、そのブレイクスルーポイントは。
岩本 豊川市には海エリアがあり、新城市には森林エリアがあるため、資源の提供やケースモデルの素材を多く提供できる点が一つです。それを解決したい企業や事業所の技術革新の窓口として一本化できるというスケールメリットは感じています。加えて協議会の取組を通じて、企業同士の連携がさらに広がっていくという理想的な動きになっています。
鈴木 南海トラフ地震のような大規模災害が発生してしまった際に単独の自治体だけで災害対応ができるかというと、おそらく不可能だと考えています。その意味でも他市との連携というのは非常に重要視され、平時から一緒に動いていくことは、必ずメリットになると考えます。
岩本 一方で、協議会の活性化とともに事務局の管理分野も広がっています。事務局は現在3名で、全員が所属している部署の仕事に加えて事務局を運営しているため、今後さらに協議会の活動を円滑に行っていくためには、分野に適したキーマンがマネジメントを担うようなところにまで持っていくことができたらいいのではないかと感じています。
また、自治体の連携が広がらないと企業活動を支えられないと認識しているので、色々な自治体と結びついていくような動きも課題です。
―自治体へのアドバイスをお願いします。
岩本 両市ともに企画政策課が担当しておりますが、必ずしもそうでなければいけないということもない。産業振興というパートでドローンを活用していくならば、地域経済の活性化に向けてドローンを活用して具体施策に取り組む産業振興部門が一番自治体としてはいいんだろうなと。ただそれだけでは支えきれないパートがあるので、企画のような部門と防災という部門が横で繋がっていれば進むのかなと思っています。
(取材日/(取材日/ 2021 年12 月16 日))
▶ 東三河ドローン・リバー構想推進協議会 事務局
豊川市 企画部企画政策課
TEL :0533-89-2126
URL: https://www.city.toyokawa.lg.jp/shisei/ machizukuri/20200801river.html
新城市 企画部企画政策課
TEL :0536-23-7620 URL: https://www.city.shinshiro.lg.jp/sangyo/sangyo/ jisedai/drone.html
vol.9
自治体の広域連携がもたらす 地域課題の解決、 未来技術の社会実装
東三河ドローン・リバー構想推進協議会
[インタビュー]
防災拠点整備とドローン物流で美郷町を災害に強く便利な町へ
島根県美郷町役場 情報・未来技術戦略課/漆谷 暢志
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1台のドローンをマルチユースに。物流、農業、レスキューなどに対応するアタッチメントの搭載で、利活用のフィールドを広げていく
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自動配送ロボットが創る日本の未来物流課題・地域課題の解決へ向けて─
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自動配送ロボットによる複数箇所への配送がルート最適化技術で実現
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vol.8
物流産業における 持続可能な未来――。ドローンはその一翼を担う
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[インタビュー]
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vol.7
見据えるのは「ビヨンド・レベル4」ドローンが当たり前にある 社会のために
国土交通省 航空局 大臣官房参事官 次世代航空モビリティ企画室 成澤 浩一
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大分県佐伯市消防本部 通信指令課/消防司令補 山口 泰弘
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vol.6
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vol.5
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ドローン前提社会・テクノロジー活用で社会課題の解決に挑む
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ドローン×Hec-Eye 小谷村が実施した野生鳥獣調査の全容
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空の道が最後の砦に。非常事態を想定し役場として万全な対策を
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防災広場の平時利活用 せんごくの杜ドローンフィールド
貝塚市役所 政策推進課 参事 横井 伸朗/主査 辻本 健一様/主査 仮屋 良太郎
コロナ特別号 with / after コロナ時代のドローン新活用
EDACでは、年々広がりを見せるドローン等を活用した課題解決の取り組みを推進すべく、自治体や企業等によるドローン等先端技術の利活用事例を取材し、EDAC会員の皆様へ会報誌として展開しております。 この度、11名の識者によるwith / after コロナ時代における新たなドローンの活用や展望についてまとめた会報誌特別号を発刊いたしました。通常はEDAC会員の方にのみお送りしておりますが、新たなドローン活用の普及展開のため、今回は特別に下記のサイトよりお申込みいただいた方にも有料にてお送りいたします。
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