~デジタル田園都市国家構想の実例紹介_第4回~
発災時の安全性・安心の確保と、平時の利便性を向上させるスマートロック活用とは
静岡県のほぼ中央に位置する藤枝市は、人口約14万人の自然豊かな都市です。東京から藤枝駅へは新幹線を乗り継いで約1時間半、市中心部へは東名・新東名の両ICから車で約15分、富士山静岡空港から車で約30分と交通の利便性も高く、県の中核都市として発展しています。
「藤枝」の名に示されている藤は、市の花に指定されています。市の中心部にある蓮華寺池公園には全長500メートルもの藤棚をつくる約250本の藤があり、藤の咲く季節には「藤まつり」というイベントを開催しています。
南海トラフ巨大地震の被害が想定される藤枝市は、防災対策に力を入れていましたが、2022年の豪雨災害において、避難所の解錠における問題に直面しました。そのためデジタル田園都市国家構想(以下、デジ田)においてはその問題を解決すべく「防災拠点開設と施設貸出へのスマートロック活用」の内容で申請しました。今回は申請に尽力した3名の方にお話しを伺いました。
総務部 危機管理センター 大規模災害対策課 主幹兼危機政策担当係長 岡本幸太 様
企画創生部 情報デジタル推進課 主幹兼スマートシティ推進係長 齋藤栄一郎 様
スポーツ文化観光部 スポーツ振興課 スポーツ施設係長 小崎裕美 様
【発災時、住民の安全のために、避難所の早期開設における物理的な鍵の問題点】
― 今回「防災拠点開設と施設貸出へのスマートロック活用」でデジ田の申請をされましたが、申請に至った経緯を教えていただけますか。
静岡県は南海トラフ巨大地震をはじめ以前から地震に備えていたこともあり、藤枝市も防災意識は高いと思います。水害についてはインフラの整備が進んでいる中で、安全性の面がかなり高まっていましたので、そこまで緊急性をもって考えていなかったということもありました。藤枝市の3分の2近くは中山間地区で山を抱えていますので、土砂崩れのような被害が無い訳ではありませんが、住家への被害が100件を超えるような災害は長い間ありませんでした。
しかし、2022年9月の台風15号に伴う記録的豪雨災害によって、県内で初めて線状降水帯が発生しました。気象予報にもなかった1時間に100ミリを超える豪雨が降り、本流に入る前の支流河川に大量の雨水が一気に集まり、想定外の水量に対応しきれない地区がありました。
その時に避難所を開設したのですが、鍵を管理している担当者がいきなりの豪雨のため、すぐに避難所に来ることができず、解錠に思いのほか時間を要してしまった場所がありました。そこを改善したいということが、防災面でありました。
― 鍵を持っている方が、被災してしまう可能性も考えられるということですね。
実際に災害がおこった場合に避難所や地域の拠点になる施設は、市内の小中学校の体育館(小学校が17校、中学校が10校、合計27校)、各地区(市内10地区)にある交流センター(以前でいう公民館)等になります。交流センター勤務の職員も含め、鍵を管理する担当者全てをその地区に住む職員だけに割り当てることはできません。ですからすぐに該当する施設に担当者が来られないことも当然想定されるという中で、市職員のいずれかがその場に着いた時に施設を開けることができないか、というところがありました。
避難所の開設が早いということは市民の皆さまの安全にも直結するので、最初に着いた職員が解錠できるということは非常に大切になってきます。
― 実は、スポーツのご担当者様がいらっしゃることが気になっています。
実は防災面だけでなく、通常の施設利用にも改善の余地がありました。小中学校の体育館やグラウンドは、スポーツの利用で一般市民にも貸出されています。そちらも一般的な鍵で解錠して中に入るのですが、各地区に管理人の方がいらっしゃいまして、予約に応じてその方のところに鍵を取りに行き、終わったらまた鍵を返しに行く体制をとっております。その管理人のなり手がいなくなってきているという課題があります。