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ドローンが当たり前にある社会に向けて―日本の抱える各種課題解決を目指す ドローンの利活用や安全安心の確保のための政策を推進!
内閣官房 小型無人機等対策推進室 企画官 加来 芳郎
ここ数年で大きな成長を遂げたドローンは、その安全性の確保はもとより、飛行における法整備や利活用の普及、地域実装が急がれている。それら各省庁にまたがるドローン施策を取りまとめる役割を担うのが内閣官房だ。国が考えるドローン施策の方向性や具体的な展望について、加来芳郎企画官に話を伺った。
【推進室の役割】
ドローン等重要政策における横断的な推進役として
―内閣官房小型無人機等対策推進室の設立背景を教えてください。
そもそも日本政府においてドローン等小型無人機政策の発端は、2015 年4 月に首相官邸にドローンが落下した事件です。ご存じのように当時はドローンは社会的に新しいものであったため特段の規制の対象ではありませんでしたが、この事件を契機の一つとしてドローンの法整備が本格化し、2015 年にドローンの飛行を規制する改正航空法が成立・施行されました。また、2016 年には原子力発電所などの重要施設周辺のドローンの飛行を禁止する小型無人機等飛行禁止法も成立・施行されています。
その後も各種ルール整備をする中でドローンの政策のウイングが広がっていき、専門的な部署が必要だということで2018 年の10 月に内閣官房小型無人機等対策推進室(以下ドローン室)が設置されました。
―ドローン室は、法制度を改革する上でどのような役割を担っておられますか。
小型無人機に関しては、技術開発や所管産業担当部分は経済産業省、航空法など飛行ルールに関する部分は国土交通省、飛行する上での電波関係ルールについては総務省…と、各省庁を横断する形で政策を進めていかなければなりませんから、国の重要政策に関する企画・立案・総合調整を行う我々内閣官房が横串組織となり、政策の取りまとめを行います。具体的には関係府省庁連絡会議や官民協議会などを開催し、各省庁や民間の意見やドローンの利用実態を吸い上げ、それらを行政実務や運用に落とし込むための法整備などを総合的に調整していきます。
昨今では、国内の空港でドローンらしきものが目撃され、離発着に混乱が生じたり、海外では実際にドローンの飛来によって空港が一時閉鎖されたりと、多大な影響が出た例もあります。そのため、「空港も小型無人機飛行禁止法の対象に加える」ための改正法案を通常国会に提出することを目指すなど、ドローン室が各種意思決定のスピードアップに貢献すべく日々活動しています。
【ドローンの利活用】
物流、警備、点検、災害分野における有人地帯での目視外飛行に向けて
―ドローンにおける政策について、当初は安全対策からスタートしたということですが、昨今は利活用の重要性も高まっていると感じます。
その通りで、ドローンにおける政策は大きく「安全対策」と「利活用」がありますが、ドローン室のミッションに昨年利活用の推進が加わったことが象徴的であるように、利活用はますます重要になっていると考えています。利活用に関しては技術開発と環境整備に向けた「空の産業革命に向けたロードマップ」を作成し、利活用レベルを1~4と定めて計画を進めています。
レベル1~3の無人地帯での利活用は進んでおり、例えば農林水産業による活用現場においては、農家の方が自らドローンを操縦するのはもちろん、操縦を含めて企業に委託するなど新たなビジネスの広がりも実感しています。そのほか、国土地理院がドローンを活用した映像測量や地図製作を進めており、技術も向上してきていると聞いています。
加えて、2020 年は次世代通信規格5G のサービスが本格的に始まる、いわば「5G 元年」となります。そこでニーズが高まってくると予想されるのが5G タブレットやスマートフォンと連携したドローンや、セルラードローンによる映像配信やリアルタイムデータ処理などで、これから実に注目となる分野です。
―2022 年を目途に「レベル4」を解禁し、産業利用に向けたドローン運用環境の整備を本格化していく目標が掲げられましたが。
レベル4で目指すべきものは、有人地帯(第三者上空)での目視外飛行です。そのための制度設計の基本方針を2019 年度中に作成する予定で進めています。具体的な分野では、物流、警備、インフラ点検、災害対応なども視野に入れています。
―無人地帯での目視外飛行である「レベル3」から「レベル4」は難易度がさらに高くなると感じます。
そこをクリアするための論点は大きく4 つあり、「所有者情報等の登録」、「機体の安全性」、「操縦者・運航管理者の技能」、「運航管理」です。車に例えると、「所有者情報」はナンバー登録で、「機体の安全性」は車検、「操縦者等の技能」は運転免許をイメージすると分かりやすく、「運航管理」は管制のようなものといえるのではないでしょうか。これらを確かなものにしたうえで有人地帯で安全に飛ばせることが必要となりますが、人口密集の度合いやドローンの重量など、それらの掛け算でリスクは異なってくるため、リスクに応じた運用とする必要もあります。上記の中では、「所有者情報等の登録」をいち早く導入するため、航空法の改正法案を、前述した空港の対象追加の法案と合わせて通常国会に提出できるよう動いています。
―環境整備に加えて技術開発に関してもかなり重要かと思います。
技術開発は経産省がリードしています。特に運航管理システムにおいては海外でも実証段階であり、開発を進めていかなければなりません。
特にレベル4 になると、様々なドローンが立体的に飛び交うことが予測されます。ここは道路や海といった平面と異なる点であり、ある程度事前に区域を管理しなくてはいけません。現時点では国交省が静態的に管理していますが、動態的にかつリアルタイムで管理するためにはUTMS(無人航空機トラフィックマネジメントシステム)が必要で、進捗管理をしながら計画的に進めています。福島ロボットテストフィールドなどを活用しながらハイレベルな実験を行い、実用化に繋げていく予定です。
【今後の展望】
現場レベルでの活用の最大化が最先端の知見となる
―日本におけるドローンの未来について、どのように想像されますか。
日本が抱えている課題の一つとして、労働人口の減少は極めて大きいものと思います。中でも、高所や山地などでの危険を伴う仕事は特に働き手の確保が難しくなってきている傾向にあります。その部分を補うとともに生産性を向上する上でドローンの力は必要不可欠といえます。災害対応、農業、インフラ点検、物流といったところは特に救世主となるのではないでしょうか。こうした社会づくりに際しては、ドローンが安全安心に飛行することが前提となりますので、そのためのルール整備や技術開発など、必要な環境整備に注力していく所存です。
―最後に、公共・民間含めた業界関係者にメッセージをお願いします。
ドローンが社会のイノベーションに役立っていくことは間違いありません。農業×ドローン、インフラ×ドローンなど、様々な産業と組み合わせることでその可能性は広がると思いますし、特に伝統的な産業と組み合わせることで、さらに新しいイノベーションが起こってくるのではないかと期待しています。ドローンが当たり前のように飛び交う社会では、自動/自律飛行は不可欠ですし、それらを可能とする技術や運用ノウハウ、環境の発展がもたらす未来の可能性は広がるばかりだと考えます。我々もドローン利活用を推進すべく努力していきますが、自治体や民間の皆様といった現場の方々に率先して利活用いただき、ドローンが色々な分野で役に立つというコンセンサスが、地域住民の皆様を含め、社会全体で醸成されていくことが大事だと考えており、そのために政府としても必要な支援を通じて貢献していきたいと思っております。
(取材日/2020 年1月9日)
内閣官房 小型無人機等対策推進室
〒107-0052 東京都港区赤坂1-9-13
TEL / 03-5575-5596
URL / https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/
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EDACでは、年々広がりを見せるドローン等を活用した課題解決の取り組みを推進すべく、自治体や企業等によるドローン等先端技術の利活用事例を取材し、EDAC会員の皆様へ会報誌として展開しております。 この度、11名の識者によるwith / after コロナ時代における新たなドローンの活用や展望についてまとめた会報誌特別号を発刊いたしました。通常はEDAC会員の方にのみお送りしておりますが、新たなドローン活用の普及展開のため、今回は特別に下記のサイトよりお申込みいただいた方にも有料にてお送りいたします。
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